「老人ホームに入所するにはどうしたらいいの?」
「待機者が多いって言われるけど、どうやって決めてるの?」
「半年ぐらい待ってるけどなかなか順番が来ないけどなんで?」
こんな悩み、よく聞きます。
現場でたくさんのご家族と話してきた中で、ほんとに多い声です。
いざ「入所施設を探そう」と思っても、どこに入れたらいいのか?どうやって選ばれるのかなど、
全く情報が足りていないのが直接家族とかかわってきて、感じるところです。
その中でも、盲点になりやすいのが、入所申し込みはするけど、その後の「入所判定会議」について知らないことが多い人が、実はかなり多いです。
この会議は、施設側が「この方を本当に受け入れていいのか?」を判断する大事なものとなっています。
私は、現役の施設長として、何件もの会議に立ち会ってきました。
その経験をもとに、「入所判定会議ってなに?」「家族はどんなことをしたらいい?」をわかりやすく解説していきます。
本記事の内容
・入所判定会議とはなにか
・入所判定会議でのポイント
・Q&A
入所判定会議とは何か?

施設に申し込めば、すぐに入れるだろう‥‥って思っていませんか?
すぐじゃなくても半年後ぐらいにはって期待していませんか?
残念ですが、そんなにカンタンな話ではありません。
介護施設では、空きが出たからといって誰でも入れるわけではなく、
「この方を受け入れて大丈夫か?」を判断する会議=入所判定会議が行われます。
この会議、家族からは見えませんが、けっこうシビアです。
議題になるのは例えばこんなこと
医療的なケアが必要か?
職員のマンパワーで対応可能か?
他の入居者との生活に支障はないか?
つまり、「この人が入所したあと、現場が回るかどうか」が冷静に検討されるのです。
会議の参加者として
- 施設長
- 生活相談員
- ケアマネジャー
- 各ユニットリーダー
- 看護職員 など
本人の状態や性格、家族関係を総合的に判断します。
ようするに入所してからいかに問題が少なく済むかを検討しています。
なぜそんな慎重になるのか?
理由はカンタンで、入所してからの「ミスマッチを防ぐため」です
ベッドが空くのを防ぐため、待機者家族からの催促の連絡が多いから、などの理由で無理に受け入れてしまうと結果として現場が混乱します。
職員が対応しきれない
他の入居者に悪影響が出る
夜間にトラブルが増える
などなど、リスクは大きいです。

私の施設でもこのようなケースありました。そのため、現場からの反発が大きく考えさせられました。
だからこそ、入所判定会議は“ただの形式”ではなく、現場を守るための必須ステップなのです。
判定会議で見られるポイント


「どういう人が入れるのか?」
これ、家族としては1番気になるポイントだと思います。
結論から言うと「点数化」して、その順番で候補者を絞っていきます。
では、どのように点数を定めているかを順に伝えていきます。
たとえばこんな要素が加点の対象になります
主な評価ポイント(加点要素)
- 要介護度が高いかどうか
-
基本的に、より介護が必要な方が優先されやすいです。
- 地域内の住民かどうか
-
市や町によっては「地元住民優先」の方針があります。
- 医療的ケアの必要性と施設側の対応力
-
施設の看護体制とマッチしているかどうか。医療的ケアに対応した施設を探すならこちら
- 緊急性(在宅介護が限界など)
-
家族が介護疲れで限界に達しているケースは、加点対象になることも。
- 同一法人内のサービス利用歴
-
すでにその法人のデイやショートステイを使っていると、評価されやすい傾向があります。
このように、ある程度“客観的な判断軸”が存在するんです。
ただし、点数だけがすべてではありません。
ここは大事なポイントです。
いくら点数が高くても、「他の入居者との相性が厳しい」などの理由で、
あえて受け入れを見送ることもあります。
逆に、点数が低くても「いまの空き状況にマッチしている」なら受け入れOKになる場合もあります。
ようするに、点数はあくまで目安。最終判断はチームの総合評価です。
よくある質問と不安への回答


ここでは、家族の方からよく聞かれる質問をQ&A形式で答えていきます。
現場職員として、そして施設長になってからも、対応してきたリアルな声をベースにしています。



参考になれば嬉しいです。
- 入所判定会議で見送られることありますか?
-
はい。あります。
うちの施設では、入所者候補の方を3名ほど選び、その中から現在の施設状況などに応じて決めています。
これは「この人が悪いから落ちた」ということではなく、
そのときの状況や施設の体制に応じて、誰を優先すべきかが決まるというだけの話です。
ようするに、“タイミングと相性”の問題。
別のタイミングなら、同じ方でも入所が決まることもあります。
- いつになったら入ることが出来ますか?
-
いつになるかは、わかりません。
なぜなら、ベッドが空くタイミングは次の3つしかありません
①亡くなる②長期入院になる③違う施設に移る
特に①の亡くなるが1番ですが
これは誰もがわかるわけではないので、答えようがありません。
目安としては、「半年〜1年待ち」になることもあれば、
「1ヶ月後に急に空く」こともある。ほんとに読めません。
だからこそ、1つの施設だけに絞らず、2〜3箇所同時に申し込んでおくことを強くおすすめしています。
- 判定候補者になったけど、今回は辞退したい。次も選んでもらえる?
-
はい、辞退しても大丈夫です。
うちの施設では、一度辞退された方でも、また次の会議で候補者として再度挙げるようにしています。
※ただし、これはあくまで「うちの施設の話」です。
他の施設では対応が異なる可能性があるので、念のためご確認ください。
- 要介護1や2なんだけど申し込みしてもいいの?
-
問題ありません。ただし、原則として要介護1・2で入所することは不可能であります。(特例あり)
ただ、申し込みに来られる方の中には「今すぐ入りたいわけじゃない」「将来を見越して」というケースも多いです。
そういう場合は、「要介護度が3以上になったときに、再度ご連絡ください」とお伝えしています。
そのタイミングで、候補者として挙げるようにしています。 - 希望した日程で入れるものですか?
-
ケースバイケースです。
入所判定会議での候補者の方がなかなか決まらない時もあるため、来週中に入れますか?
などの回答にはどうしても、きちんと答えることができません。
なにもかも早く決まれば、2週間以内には入所する時もありますし、入院されている場合だと長くて1ヶ月かかることもあります。
入所判定会議後の流れ


入所判定会議の結果「受け入れ可能」となれば、施設側から連絡をします。
ここからは、ざっくりと流れをお伝えします。
入所日を決める(病院との調整や、家族の都合も含めて)
契約日を決める(家族が施設に行って契約書を交わす)
必要書類の提出(診療情報提供書、健康診断書など)
持ち込み物品の準備(衣類、日用品、オムツなど)
不合格の場合:どうしたらいい?
落ちたら終わり……ではありません。
選択肢はちゃんとあります。
ショートステイや訪問介護でしのぐ(一時的な対処)
正直、「1つ目で決まる」と思い込んでる方が多いのですが、
施設探しって、わりと「就活」みたいなものです。
複数申し込んで、面談・判定を経て、やっと入れる場所が見つかる。
それが普通なので、落ちても落ち込まないでくださいね。
ちなみに、複数の施設を比較するなら、老人ホーム検索サイトを使うのが効率的です。
いまの親の状態に合う施設をプロが紹介してくれるサービスもあります。
まとめ 焦らず、選択肢を広く持とう


親の施設探しって、ほんとに大変です。
情報も少ないし、どこに相談していいかもわかりにくい。
その中で「入所判定会議」っていうプロセスは、まだまだ一般の方には知られていません。
でも、これは避けて通れない大事なステップです。
とはいえ、落ちたからといって人生終わりじゃありません。
施設選びって、就活と似てます。何件か申し込んで、面談して、タイミングが合ったところに入る。
そんな感じで、少しずつ前に進めばOKです。
最後に大事なことをひとつだけ。
焦らないこと。
施設側も、家族も、本人も。
お互いに「よかった」と思える選択ができるように、ちゃんと話し合って、情報を集めていきましょう。
施設探しを進めるには、まず選択肢を知ることが大事です。
自分でゼロから探すのが大変なら、プロに頼るのもアリですよ。
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